「介護タクシーを使いたいなら、まずケアマネジャーに相談を」——検索するとどのページにもそう書かれているのに、なぜ相談が必須なのか、相談しないとどうなるのかまで説明しているページは意外と少ないものです。「保険が使えると聞いたので、直接タクシー会社に電話してみた」という方が、いざ利用当日になって「保険は使えません、全額自費です」と告げられて戸惑う——介護たくしーさーちに寄せられる相談でも、こうした行き違いは珍しくありません。

先に、要点をまとめます。

  • 介護保険(通院等乗降介助)で介護タクシーを使うには、ケアマネジャーが作成するケアプランに位置づけられていることが前提です。ケアプランに入っていなければ、事業所がどれだけ丁寧に対応しても保険は適用されません
  • ケアプランへの位置づけは、利用目的・回数・行き先をケアマネジャーに伝え、区分支給限度基準額(1か月に使える介護保険サービスの上限)の枠内に収まるよう組み込んでもらう手続きです
  • 自費の介護タクシーや福祉タクシーであれば、ケアプランへの位置づけは不要です。「保険を使うかどうか」で、相談の要不要が分かれます
  • ケアプランに位置づけても、保険が適用されるのは乗降介助などの介助分のみです。運賃や車椅子・ストレッチャーの機器レンタル料は、保険適用の利用でも自費であることに変わりありません

ただし、ケアマネジャーに相談さえすれば必ず希望通りに使えるわけではなく、区分支給限度基準額との兼ね合いで「使いたい回数が全部は収まらない」というケースも起こり得ます。この点は後半、区分支給限度基準額のところで詳しく触れます。

ケアマネジャーへの相談は、なぜ必須なの?

介護保険の通院等乗降介助は、ケアマネジャーが作成する居宅サービス計画(ケアプラン)に位置づけられていない限り、保険給付の対象にならないためです。

介護保険サービスは、要介護認定を受けた方が自由に組み合わせて使えるわけではなく、ケアマネジャーが本人の心身状態や生活状況をふまえて作成するケアプランに沿って提供される仕組みになっています。通院等乗降介助(訪問介護事業所が行う、乗車前の準備・乗降の介助・降車後の受診手続きの支援などをまとめて評価する介護保険サービス)も例外ではありません。

事業所に直接電話をかけて「介護保険で使いたい」と伝えても、ケアプランに位置づけがなければ、事業所側は保険請求ができません。事業所によっては、その場で「まずケアマネジャーにご相談ください」と案内されるか、案内がないまま自費扱いで進んでしまうこともあります。保険適用を希望する場合は、事業所に連絡する前に、まず担当のケアマネジャーに相談するのが正しい順番です。

なお、この手続きが必要になるのはあくまで要介護1〜5の認定を受けている方の話です。要支援でも介護タクシーは使える?で整理しているとおり、要支援1・2の方は通院等乗降介助そのものが対象外のため、ケアマネジャーへの相談以前に、まず対象になるかどうかの確認が必要になります。

ケアマネジャーには何を伝えればいい?

行き先・利用目的・希望する頻度の3点を具体的に伝えると、ケアプランへの位置づけがスムーズに進みます。

ケアマネジャーは、本人の状態や希望をもとにケアプランの原案を作成し、本人・家族の同意を得たうえで確定させます。相談の際に伝えるとよい内容は次の3つです。

  • 行き先: 通院先の医療機関名、診療科、月にどのくらいの頻度で通っているか
  • 利用目的: 定期受診なのか、リハビリなのか、透析のような繰り返し通院なのか
  • 希望する頻度: 週1回なのか、月2回なのか。曜日や時間帯の希望があれば合わせて伝える

このとき、「タクシーに乗る部分」だけでなく、「乗る前の準備にどのくらい手を貸してほしいか」「受診後の会計や薬の受け取りまで付き添ってほしいか」も伝えておくと、ケアプラン上の介助の範囲がはっきりします。伝え方の具体的な型は、介護タクシーをケアマネジャーに相談する方法にまとめているので、初めて相談する方はあわせて確認しておくと安心です。

相談するタイミングにも工夫の余地があります。多くの家庭は、実際に介護タクシーが必要になった直前になって初めてケアマネジャーに相談しますが、ケアマネジャーは少なくとも月1回程度、利用者の状態やサービスの実施状況を確認する「モニタリング」を行っています。このモニタリングの機会に「通院の負担が増えてきたので、介護タクシーの利用も検討したい」と一言伝えておくと、状況の変化に応じたケアプランの見直しにつながりやすくなります。次のモニタリングを待たなければ相談できないわけではないため、気になった時点でケアマネジャーに連絡して構いません。

区分支給限度基準額とは何?介護タクシーの回数に上限はある?

要介護度ごとに、1か月に利用できる介護保険サービスの上限額(区分支給限度基準額)が決まっており、通院等乗降介助もこの枠内でカウントされます。

介護保険は、要介護1から要介護5まで、認定区分に応じて1か月あたりに利用できるサービスの単位数の上限が定められています。訪問介護・通所介護・福祉用具貸与など、利用しているすべての介護保険サービスの単位数を合算して、この上限内に収まるように組み立てるのがケアプランの役割です。

通院等乗降介助もこの枠の中に含まれるため、すでに訪問介護やデイサービスを多く使っている方の場合、希望する回数の通院等乗降介助が組み込めないことがあります。たとえば「週3回の透析通院すべてに保険を使いたい」と希望しても、他のサービスとの兼ね合いで枠が足りなければ、一部は自費での利用に切り替える、あるいは他のサービスの利用回数を見直すといった調整が必要になる場合があります。透析通院のように回数が多く長期間続く外出での保険適用の考え方は、透析の通院に介護タクシーは使える?週3回の送迎負担を軽くする制度と事業所の探し方で具体的に整理しています。

この調整はケアマネジャーの専門領域であり、家族が自分で計算する必要はありません。ただし、「保険で全回数をまかなえるとは限らない」という前提を知っておくと、事業所探しの段階で自費利用の選択肢も含めて検討でき、当日になって慌てずに済みます。介護保険が対象になる外出・ならない外出の全体像は、介護タクシーは冠婚葬祭・買い物に使える?でも整理しています。

実際の調整では、ケアマネジャーが「今月はデイサービスの利用を1回減らして、その分を通院等乗降介助に回す」といった形で、複数のサービスの組み合わせを見直すことがあります。家族から見ると「介護タクシーだけの話」に見えても、ケアプラン全体のバランスの中で決まる仕組みだと理解しておくと、ケアマネジャーへの相談もスムーズになります。もし訪問介護やデイサービスをまだ利用しておらず、通院等乗降介助だけを希望する場合は、枠が足りなくなる心配は比較的少ないため、まずはその旨を伝えて相談してみてください。

ケアマネジャーへの相談からケアプランへの位置づけ、事業所への依頼までの流れを4段階で示したフロー図

ケアプランへの位置づけがないまま使うと、どうなる?

保険適用を前提に依頼しても、ケアプランに位置づけがなければ全額自費での精算になります。

事業所は、利用者から「介護保険で」と言われたからといって、確認なしに保険請求できるわけではありません。ケアプランへの位置づけが確認できない場合、事業所は自費利用として案内するか、いったん保留にしてケアマネジャーへの確認を促すことになります。急な退院や体調変化で「今すぐ手配したい」という場面では、この確認の往復が焦りにつながりやすいところです。

急ぎで手配が必要な場面では、まず自費の介護タクシー・福祉タクシーで対応し、落ち着いてからケアマネジャーに相談してケアプランへの位置づけを検討する、という順番でも構いません。保険適用は「使った分をさかのぼって請求できる」制度ではないため、その回の分は自費のままになりますが、次回以降の利用に向けてケアプランを整えておけば、以降は保険適用を検討できます。退院時の手配タイミングについては、退院時の介護タクシー手配はいつから?で詳しく取り上げています。

実際によくある行き違いは、「以前、別の通院で介護タクシーを保険で使えたから、今回も同じように使えるはず」という思い込みです。ケアプランへの位置づけは、通院先や目的が変われば見直しが必要になることがあります。転院した、新しく通う診療科が増えた、といったタイミングでは、以前のケアプランのままでは対応できない場合があるため、通院先が変わるたびにケアマネジャーへ一報しておくと、位置づけの見直し漏れを防げます。

なお、入院先から別の病院へ移る「転院」そのものの移送は、そもそも入院中は居宅サービスとしての介護保険が使えないという別の理由から、通院等乗降介助の対象外になります。ケアプランの見直しとは別の制度上の線引きなので、あわせて転院に介護タクシーは使える?入院中は介護保険が使えない理由と費用の考え方で確認しておくと混同を防げます。

もう一つ起こりやすい行き違いが、家族間での情報共有不足です。ケアマネジャーへの相談を担当した家族と、実際に事業所へ連絡する家族が別の場合、「保険が使える前提で頼んだつもりが、実は位置づけの手続きがまだ途中だった」ということが起こりえます。複数の家族で役割分担している場合は、ケアプランへの位置づけが完了しているかどうかを、事業所に連絡する前に家族間で一言確認し合っておくと、こうした行き違いを防げます。

自費の介護タクシー・福祉タクシーなら、ケアマネジャーへの相談は不要?

自費で利用する場合は、ケアプランへの位置づけが不要なため、事業所に直接申し込めます。

介護保険を使わず、自費の介護タクシーや福祉タクシーを利用する場合は、ケアプランに位置づける必要がないため、事業所へ直接連絡して予約する形になります。目的の制限もなく、通院だけでなく買い物や冠婚葬祭、通所以外の外出にも使えるのが自費利用の特徴です。

一方で、「保険が使えるかどうか分からないまま、とりあえず自費で依頼した」というケースもよく見られます。要介護認定を受けている方であれば、一度ケアマネジャーに確認しておくと、次回以降は保険適用に切り替えられる可能性があります。保険と自費、それぞれの手続きの流れの違いは、介護タクシーを利用するまでの流れで整理しています。

自費利用と保険利用のどちらを選ぶかは、通院の頻度や区分支給限度基準額の空き状況によっても変わります。たとえば、他の介護保険サービスをすでに多く使っていて枠に余裕がない方は、無理に保険適用にこだわらず、最初から自費で継続的に依頼するという選択も現実的です。逆に、まだ他のサービスをあまり利用しておらず枠に余裕がある方は、ケアマネジャーに相談して保険適用を検討する価値があります。どちらが自分の状況に合っているかは、実際の利用状況を把握しているケアマネジャーに確認するのが確実です。

なお、介護たくしーさーちは事業所の検索・比較と問い合わせの送客までを担うサイトで、個別の配車代行や運送の取次、ケアプランの作成そのものは行っていません。ケアプランへの位置づけは、あくまで担当のケアマネジャーとの相談を通じて進めていただく手続きです。

事業所を選ぶときは、ケアプランの内容と合っているかも確認する

ケアプランに位置づけた内容(通院先・頻度・介助の範囲)に、実際に対応できる事業所を選ぶことが、当日のトラブルを防ぎます。

ケアプランに「週1回、○○病院への通院、乗降介助あり」と位置づけられていても、依頼した事業所がその曜日に対応できなかったり、車椅子対応車両の空きがなかったりすれば、結局は予定通りに動けません。ケアプランの内容が固まったら、その条件に合う事業所を、車両・機器や対応エリア、予約の取りやすさから絞り込むことになります。事業所を比べるときに見るべき軸は、介護タクシーの事業所はどう比べる?にまとめています。

また、事業所を選ぶ段階で「介護保険の指定を受けている事業所かどうか」を確認しておくことも欠かせません。介護タクシーには、介護保険の通院等乗降介助に対応できる指定訪問介護事業所と、自費利用のみを扱う事業所があります。ケアプランに位置づけても、依頼先が指定を受けていない事業所であれば保険請求はできないため、問い合わせの早い段階で「介護保険の指定を受けていますか」と確認しておくと、後から依頼先を変更する手間を避けられます。

定期的に利用する場合は、一度合った事業所と長く付き合うほうが、毎回の情報共有の手間が減ります。ただし、通院先の医療機関が変わったり、リハビリが加わって頻度が増えたりした場合は、今の事業所がその変化に対応できるかを都度確認し、必要であればケアマネジャーに再度相談してケアプランを見直すことも検討してください。

この記事で持ち帰れること

  • 介護保険で介護タクシーを使うには、事業所への連絡より先にケアマネジャーへの相談とケアプランへの位置づけが必要だという手続きの順番
  • ケアプランへの位置づけは区分支給限度基準額の枠内で調整されるため、希望回数がそのまま通るとは限らないという前提
  • 自費利用ならケアマネジャーへの相談は不要で、保険と自費のどちらで進めるかによって最初の相談先が変わるという判断基準

まずは、次の通院の行き先と頻度をメモしてみましょう

担当のケアマネジャーがいる方は、次に介護タクシーを使いたい行き先・目的・希望の頻度を、簡単にメモにしてから相談の連絡をしてみてください。それだけで、ケアプランへの位置づけの相談がスムーズに進みます。まだ相談したことがない方も、次回のモニタリングを待たずに、気づいた時点で一報するだけで構いません。

介護たくしーさーちでは、お住まいの地域(営業エリア)やサービス区分、車両・機器、介助対応から事業所を検索・比較できます。料金の内訳の考え方は介護タクシーの料金はなぜ分かりにくい?、初めての電話が不安な方は介護タクシーに初めて電話するとき、何を伝えればいい?にまとめています。ケアプランへの位置づけが整い、条件に合う事業所が見つかったら、検索結果の詳細ページから直接お問い合わせください。