週3回、朝に送り出して、昼過ぎに迎えに行く。人工透析の通院は、回数が多く、そして長く続く外出です。ご家族が自家用車で送迎しているうちに、仕事との両立が難しくなったり、ご本人の足腰が弱って「乗り降りに手を貸すだけ」では済まなくなったり。「そろそろ介護タクシーに頼めないだろうか」と考え始めた方に向けて、透析送迎での介護タクシーの使い方を整理します。

先に、要点をまとめます。

  • 透析の通院に介護タクシーは使えます。要介護1〜5の方は、ケアプランに位置付けることで乗り降りの介助分に介護保険(通院等乗降介助)が適用されます
  • 保険が効くのは介助分のみで、運賃と車椅子・ストレッチャーなどの機器レンタル料は自費です。別枠で、透析通院の交通費を助成する制度を設けている自治体もあります
  • 週3回の定期利用だからこそ、曜日固定の予約に対応できるか・帰りの迎え時間に融通が利くかが事業所選びの決め手になります

ただし、透析の送迎には、単発の通院にはない「帰りの迎え」ならではの落とし穴が1つあります。これは後半の、事業所の探し方のところで詳しく触れます。まずは、そもそも透析の通院に介護タクシーが使えるのか、保険はどこまで効くのかから、順番に見ていきましょう。

透析の通院に介護タクシーは使える?

使えます。人工透析の通院は、介護タクシーの利用目的として最も代表的なもののひとつです。他の外出と違うのは、週3回・長期間の「定期利用」になる点です。

血液透析は、一般に週3回・1回4時間程度の治療を続けるのが標準的なスケジュールとされています(日本透析医学会が示す維持血液透析の標準的な治療条件に基づく整理です)。行きと帰りを分けて数えれば、送迎だけで週6回の移動が発生する計算です。冠婚葬祭や退院のような一度きりの外出とは、移動の性質がまったく違います。

この「回数の多さ」は、ご家族の送迎にじわじわ効いてきます。1回1回は30分の運転でも、週6回が何か月も、何年も続くとなると、仕事の調整や体力の面で無理が出てきます。ご本人にとっても、透析後は体調が変わりやすく、家族の車への乗り降りが少しずつ負担になっていくことがあります。介護タクシーは、この定期的な移動を、介助のできる運転手に任せられる仕組みです。

ご自身の状況に置き換えるなら、「今日の送迎」より「この送迎が何年も続くこと」を想像してみてください。すでにきついと感じているなら、それが切り替えを検討するタイミングです。

透析の送迎に介護保険は適用される?

要介護1〜5の認定を受けていて、ケアプランに「通院等乗降介助」が位置付けられていれば、乗り降りの介助分に介護保険が適用されます。運賃と機器レンタル料は自費です。

通院等乗降介助は、介護保険の訪問介護サービスのひとつで、車両への乗り降りの介助、乗車前・降車後の移動の介助、受診の手続きの介助などが対象になります。透析の通院は「通院」そのものなので、外出の目的の面で対象から外れる心配はまずありません。

ただし、条件が2つあります。1つめは、要介護1〜5の認定を受けていること。要支援1・2の方や認定を受けていない方は、この仕組みの対象外となるため、全額自費の介護タクシーまたは福祉タクシーの利用になります。2つめは、ケアマネジャーが作成するケアプランに、透析通院のための通院等乗降介助が位置付けられていること。「要介護認定さえあれば、当日から保険で乗れる」わけではない、という点は押さえておいてください。

透析送迎で介護保険(通院等乗降介助)が使えるかどうかを、要介護認定とケアプランの2つの条件で判定する流れ図

また、保険が効くといっても、対象はあくまで介助の部分だけです。移動そのものにかかる運賃、車椅子やストレッチャーを借りる場合の機器レンタル料は、保険を使う場合でも自費になります。保険が対象にする外出の範囲は介護タクシーは冠婚葬祭・買い物に使える?で詳しく整理しています。なお、介護保険を使う送迎では、ご家族の同乗は原則として認められていません(例外の扱いは自治体の判断によります)。付き添いが必要な場合の考え方も、同じ記事で触れています。

週3回の透析送迎、費用はどう考えればいい?

「運賃」「介助料」「機器レンタル料」の3つに分けて確認するのが基本です。定期利用では同じ内訳が毎回積み重なるため、1回分の内訳を最初に固めておくことが大切です。

介護タクシーの料金は、移動にかかる運賃、乗り降りや付き添いにかかる介助料、車椅子・ストレッチャーなどを借りる場合の機器レンタル料という3つの要素でできています。介護保険が適用されるのは介助分だけで、運賃とレンタル料は自費です。この3つの構造は介護タクシーの料金はなぜ分かりにくい?で詳しく説明しています。

透析送迎で特に意識したいのは、単発の外出と違って、この内訳が週3回・毎月続くことです。だからこそ、最初の見積もりの段階で「自宅から透析施設までの往復で、毎回どういう内訳になるのか」を固めておくと、月単位の負担が見通せるようになります。機器を自前の車椅子でまかなえるか、介助はどこからどこまで頼むかで、毎回の内訳は変わります。

もうひとつ知っておきたいのが、自治体の助成制度です。市区町村によっては、人工透析のための通院にかかる交通費の一部を助成する制度を設けているところがあります(例: 新潟県上越市の「人工透析患者通院交通費助成」、山形市の「人工透析患者通院交通費の助成」など)。じん臓機能障害による身体障害者手帳を持っていることなどが要件になっている場合が多く、制度の有無・名称・条件は自治体ごとに異なります。お住まいの市区町村の障害福祉担当課に「透析通院の交通費助成はありますか」と確認してみてください。地域によっては、福祉タクシー券の交付制度が使えることもあります。

ご家族の状況に当てはめるなら、「介護保険で介助分を軽くする」「自治体の助成で交通費を軽くする」という2つの入り口を、それぞれ別の窓口(ケアマネジャーと市区町村)で確認するイメージを持っておくと動きやすくなります。

透析送迎に対応できる事業所は、どう探せばいい?

営業エリアに自宅と透析施設の両方が入っているか、曜日固定の定期予約に対応できるか、必要な車両・機器があるか。この3点をまず確認します。

透析送迎は「毎週同じ曜日・同じ時間帯」の利用になるため、事業所側から見ても、車両とスタッフを長期的に確保する必要のある依頼です。単発の予約とは事情が違うので、探す段階から「透析の定期送迎の相談」として話をするのが近道です。確認したいポイントは次のとおりです。

  • 営業エリア: 自宅と透析施設の両方が営業エリアに入っているか
  • 定期予約への対応: 週3回・曜日固定の予約枠を確保できるか。年末年始や臨時の日程変更にどう対応しているか
  • 車両・機器: 車椅子のまま乗れる車両か。将来リクライニング車椅子やストレッチャーが必要になったとき対応できるか
  • 帰りの迎えの柔軟性: 透析の終了時刻が前後したときに、迎えの時間を調整してもらえるか

最後の1点が、冒頭でお伝えした「帰りの迎え」の落とし穴です。透析は治療時間こそ決まっていますが、その日の体調によって終了後の回復に時間がかかることがあり、迎えの時刻が読みにくいのです。迎えの時間が固定で融通が利かない取り決めだと、体調が整わないまま急いで車に乗ることになったり、逆に長い待機で追加の費用が発生したりします。予約前に「終了が遅れたときはどうなりますか」と確認しておくと、この行き違いを防げます。

複数の事業所を比べるときの共通の視点は介護タクシーの事業所はどう比べる?にまとめています。透析送迎の場合は、そこで挙げた6つの軸に、上の4点を重ねて見ていくイメージです。

利用を始めるまでの流れは?誰に相談すればいい?

要介護認定を受けている方は、まず担当のケアマネジャーに相談します。ケアプランへの位置付けと事業所探しを並行して進めるのが基本の流れです。

介護保険で透析送迎を使いたい場合、入り口は事業所への電話ではなく、ケアマネジャーへの相談です。「透析の送迎を家族だけで続けるのが難しくなってきた」と伝えれば、通院等乗降介助をケアプランに位置付けられるかの検討と、対応できる事業所の情報集めが始まります。

流れとしては、①ケアマネジャーに相談、②ケアプランの見直し・位置付け、③事業所を探して条件を確認、④契約して利用開始、という順番です。事業所への最初の電話で何を伝えればよいかは介護タクシーに初めて電話するとき、何を伝えればいい?にまとめていますが、透析送迎の場合は、通院先・曜日・時間帯・使っている機器の4点を最初に伝えると話が早く進みます。

要支援の方や認定を受けていない方は、通院等乗降介助の枠組みが使えないため、自費の介護タクシーや福祉タクシーを直接探すことになります。また、透析施設によっては送迎サービスを行っているところもあるので、通院先の相談員(ソーシャルワーカー)に移動手段の選択肢を聞いてみるのも有効です。

この記事で持ち帰れること

  • 透析の通院に介護タクシーが使えること、保険適用には要介護1〜5の認定とケアプランへの位置付けという2つの条件があることを、ご自身のケースに当てはめて判断できるようになります
  • 費用は運賃・介助料・機器レンタル料の3区分で確認すること、それとは別に自治体の透析通院交通費助成という確認先があることを持ち帰れます
  • 事業所選びでは、曜日固定の定期予約への対応と「帰りの迎えの柔軟性」を予約前に確認すべきだと分かります

まずは、送迎がいちばん大変な曜日を1つ書き出してみましょう

今週の透析の予定を思い浮かべて、送迎の負担がいちばん重い曜日と時間帯を1つ、メモに書き出してみてください。「火曜の迎えだけ頼めれば、仕事を早退しなくて済む」のように、すべてを任せなくても、部分的な利用から始められるのが介護タクシーの良いところです。そのメモは、ケアマネジャーに相談するときの最初のひとことにもなります。

介護たくしーさーちのトップページでは、お住まいの都道府県・市区町村、サービス区分、車両・機器、介助対応から介護タクシー事業所を検索・比較できます。気になる事業所が見つかったら、詳細ページから直接お問い合わせください。なお、当サイトは事業所の検索・比較と問い合わせのきっかけづくりに徹しており、配車や予約の代行は行っていません。予約・契約のご相談は、各事業所と直接進めていただく形になります。