先に、要点をまとめます。
- 生活保護を受けていても、介護タクシーの利用そのものを禁じられているわけではありません。ただし運賃を含めた費用が自動的に生活保護から出るわけではなく、「移送費」という別の給付を個別に申請し、認められる必要があります
- 移送費は公共交通機関の利用が難しい事情がある場合に限って認められる例外的な給付で、事前申請が原則です。「とりあえず乗ってから後で請求する」という順番では認められないことが多いため、最初の相談タイミングが重要になります
- 最初の相談先は担当のケースワーカーです。医師の意見書、通院の頻度、公共交通機関を使えない理由を具体的に伝えられるよう準備しておくと、相談がスムーズに進みます
「介護タクシーを使いたいけれど、生活保護を受けているので費用が心配」という段階で足が止まってしまう方は少なくありません。この記事では、制度の詳しい確認事項に入る前の「そもそも何から相談すればいいのか」という最初の一歩を整理します。個別の申請書類や確認ポイントの一覧は、生活保護を受けている方の移動支援確認ポイントで詳しくまとめているので、相談の準備が整ったらあわせてご覧ください。
生活保護を受けていると介護タクシーは使えない?
使えないわけではありません。ただし運賃部分の費用は、生活保護制度の「移送費」という給付を個別に申請し、認められた場合に支給されます。
生活保護法第15条第6項では、医療扶助の一環として「移送」が給付の対象に含まれることが定められています。ここでいう移送費は、通院にかかる交通費全般を指すもので、介護タクシーの利用がそのまま対象になるわけではなく、公共交通機関の利用が難しいという事情がある場合に、その代替手段として認められる仕組みです。
つまり、「生活保護だから介護タクシーが使えない」のではなく、「生活保護だから費用の出所が異なり、事前の手続きが必要になる」というのが正確な理解です。自費で全額を支払える方であれば予約してすぐに利用できますが、移送費を使う場合は、先に福祉事務所への相談と申請という手順を踏む必要があります。この順番を知らないまま「まず乗ってしまって、後から生活保護の窓口に相談すればいい」と考えていると、事後申請は対象にならないと言われてしまうことがあります。
移送費はどんなときに認められる?
電車やバスなどの公共交通機関を利用することが、傷病や身体の状態によって現実的に難しい場合に限られます。単に「タクシーの方が楽だから」という理由では対象になりません。
移送費の支給要件は、「傷病等の状態に応じて経済的かつ合理的な経路及び交通手段」によることとされています(厚生労働省の生活保護法医療扶助運営要領に基づく取り扱い)。具体的には、次のような事情がある場合に、タクシーを含む移送手段が認められる可能性があります。
- 歩行が困難で、駅やバス停までの移動、乗り換えができない
- 車椅子を使用しており、公共交通機関の利用そのものが難しい
- 医師の診断により、公共交通機関の利用が病状に悪影響を及ぼすと判断されている
いずれの場合も、医師の意見書や診断書によって、公共交通機関の利用が困難であることを示す必要があります。「なんとなく体調が悪いから」「本人が疲れやすいから」といった説明だけでは、判断材料として不十分になりがちです。かかりつけ医に、通院方法についての意見を早めに相談しておくと、その後の手続きが進めやすくなります。
最初に何をすればいい?
担当のケースワーカーに、通院の状況と公共交通機関を使えない理由を具体的に伝えることから始めます。申請は利用前が原則です。
生活保護を受給している方には、地域の福祉事務所に担当のケースワーカーが割り当てられています。移送費の相談窓口は、この担当ケースワーカーです。次の3つを整理してから相談すると、話がスムーズに進みます。
- 通院先と頻度: どの医療機関に、どのくらいの頻度で通っているか
- 公共交通機関を使えない理由: 歩行の状態、車椅子の使用有無、医師の見解など、具体的な事情
- 希望する移動手段: 介護タクシーを希望する場合、その理由(乗降介助が必要、車椅子のまま移動したい等)
申請は、利用の前に行うことが原則です。福祉事務所によっては、事後の申請を対象外としている場合があるため、「介護タクシーを使ってみようかな」と考え始めた段階で、早めにケースワーカーへ相談しておくことが、結果的に一番確実な進め方になります。
移送費の支給が認められた場合でも、支給額には上限が設けられていたり、実費の一部にとどまったりすることがあります。また、介護保険の通院等乗降介助を利用する場合は、介助部分は介護保険から給付され、運賃部分についてのみ移送費の対象になるかどうかを別途確認する必要があります。このあたりの制度の重なりや、申請時に確認しておきたい具体的なポイントは、生活保護を受けている方の移動支援確認ポイントで個別に整理しているので、ケースワーカーへの相談前の準備として役立ててください。
ケースワーカーにはどう伝えればいい?
初めて相談するときは、何をどこまで話せばよいか迷うものです。次のような伝え方を参考にしてみてください。
「○○病院の△△科に、月に2回通院しています。足腰が弱くなっていて、最寄り駅までの徒歩移動とバスの乗り換えが難しく、医師からも公共交通機関の利用は負担が大きいと言われています。次回の通院から介護タクシーを利用したいのですが、移送費の対象になるか、申請の方法を教えていただけますか。」
このように、①通院先と頻度、②公共交通機関を使えない具体的な理由、③希望する移動手段、の3点を順番に伝えると、ケースワーカー側も状況を把握しやすくなります。医師の意見をすでに聞いている場合は、その内容もあわせて伝えると、その後の意見書の依頼がスムーズです。
移送費が認められなかったら、他に方法はある?
移送費が対象外と判断されても、自治体の福祉タクシー券や障害者割引など、別の制度が使える場合があります。ケースワーカーに他の選択肢もあわせて相談してみましょう。
移送費の申請が認められない、または対象外と判断されるケースもあります。その場合でも、身体障害者手帳をお持ちであれば、自治体独自の福祉タクシー券や、タクシー事業者による障害者割引が別途利用できる可能性があります。これらは生活保護の移送費とは異なる制度なので、それぞれの窓口・要件を確認する必要がありますが、費用を抑える選択肢として知っておく価値があります。制度ごとの違いや組み合わせ方は、介護タクシーの料金はなぜ高い?費用を抑える割引・助成・控除の全体像で整理しているので、あわせて確認してみてください。
また、介護保険の被保険者であれば、要介護認定を受けたうえで通院等乗降介助を利用できる場合があります。この場合、介助にかかる部分は介護保険から給付されますが、運賃自体は自費(または移送費・福祉タクシー券などの対象になるかを別途確認)になる点に注意が必要です。介護保険で対象になる範囲については、介護タクシーはケアマネジャーへの相談が必須?ケアプランに入れないと保険が使えない理由で詳しく解説しています。ケアマネジャーがいる場合は、ケースワーカーとケアマネジャーの両方に相談し、使える制度に抜け漏れがないか整理してもらうとよいでしょう。
介護タクシー事業所を探すとき、生活保護であることは伝えるべき?
伝えておくことをおすすめします。移送費や制度の利用に慣れている事業所であれば、当日のやり取りがスムーズになります。
介護タクシー事業所によって、生活保護の移送費に関する手続きへの慣れは異なります。予約の電話の段階で「生活保護の移送費を利用する予定です」と伝えておくと、対応可能かどうか、領収書の発行方法などを事前に確認できます。初めて事業所に電話するときに何を伝えればよいか迷う場合は、介護タクシーに初めて電話するとき、何を伝える?6項目のメモで迷わず話せるでメモの作り方を整理しているので、参考にしてください。
事業所を選ぶ際は、料金体系や対応可能な介助内容とあわせて、制度利用への対応実績も確認しておくと安心です。比較の視点は、介護タクシーの事業所はどう比べる?家族が見るべき6つの軸と確認の順番で整理しています。
相談のタイミングで、よくある行き違いは?
「急いでいるから」と申請前に利用してしまうケースと、「どうせ対象外だろう」と最初から相談しない・諦めてしまうケースの2つが、よくある行き違いです。
実際に起こりやすいパターンを整理しておきます。
- 申請前に利用してしまうケース: 通院日が急に決まり、「先に乗って、後でケースワーカーに相談すればいい」と考えて介護タクシーを利用してしまい、事後申請は対象外と判断された。緊急性の高い受診(急病・事故など)は取り扱いが異なる場合があるため、体調が急変したときの対応方針についても、あらかじめケースワーカーに確認しておくと安心です。
- 相談する前から諦めてしまうケース: 「生活保護だから、どうせタクシー代は出ないだろう」と思い込み、そもそも相談すらしないまま、負担の大きい移動を続けてしまう。実際に対象になるかどうかは、通院先までの距離や本人の身体状況によって個別に判断されるため、相談してみないと分からないというのが実情です。
- 担当が変わったタイミングで再確認を忘れるケース: 以前の担当ケースワーカーには伝えていた事情が、担当交代後に引き継がれておらず、あらためて説明が必要になった。担当が変わった際は、移送費に関する希望や事情を、あらためて伝え直しておくとよいでしょう。
いずれも、「まず相談してみる」という最初の一歩を早めに踏み出すことで防ぎやすい行き違いです。判断に迷う段階でも、担当のケースワーカーに率直に状況を伝えてみることをおすすめします。
この記事で持ち帰れること
- 生活保護を受けていても介護タクシーの利用自体は可能で、費用の出所と手続きの順番が異なるという基本の理解が持ち帰れます
- 移送費が認められる条件(公共交通機関の利用が困難という事情と、事前申請)を、自分の状況に当てはめて確認できるようになります
- 最初に相談すべき相手が担当のケースワーカーであり、通院先・頻度・理由の3点を整理して伝えるとよいことが分かります
まずは、担当のケースワーカーに一言相談してみましょう
制度の詳しい確認事項や申請の流れは生活保護を受けている方の移動支援確認ポイントにまとめていますが、実際の判断は自治体・福祉事務所によって異なります。「介護タクシーを使いたいけれど、費用が心配」と感じている段階であれば、まずは担当のケースワーカーに、通院の状況を伝えるところから始めてみてください。
介護たくしーさーちでは、都道府県やサービス区分、対応可能な介助内容から事業所を検索・比較できます。気になる事業所が見つかったら、検索結果の詳細ページから直接お問い合わせいただき、生活保護の移送費や各種制度への対応状況をご確認ください。

