「要支援2なんですが、介護タクシーって保険で呼べますか」。母の通院の付き添いを始めたばかりの頃、ケアマネジャーにそう尋ねて、少し戸惑う答えが返ってきたことがあります。「要支援の方は、介護タクシーの介護保険部分は対象外になります」。要介護のイメージが強い介護タクシーですが、要支援の親を持つ家族にとっては「うちは対象外なのか、それとも使える方法があるのか」が分かりにくい制度です。

先に、要点をまとめます。

  • 介護保険の「通院等乗降介助」(いわゆる介護タクシーの保険適用部分)は要介護1〜5が対象で、要支援1・2は対象外です
  • 要支援の方には、市区町村が実施する総合事業の移動支援という別の制度が用意されている場合がありますが、実施の有無・内容は自治体によって差があります
  • 総合事業の対象にならない、または利用したくない外出は、全額自費の介護タクシー・福祉タクシーであれば要介護度に関係なく利用できます。この記事の後半で、自費利用の料金の考え方まで具体的に整理します

ただし、ここで一つだけ先にお伝えしておきたいことがあります。要支援から要介護に認定区分が変わるタイミングでは、「今まで使えなかった介護タクシーが急に使えるようになる」という切り替わりが起きます。この変化にどう備えておくといいかも、記事の後半で触れます。ここでは、まず「なぜ要支援は対象外なのか」という制度の理由から、実際に使える選択肢まで、要支援の家族を持つ方が知っておきたいことを順番に整理します。

要支援でも介護タクシーの介護保険は使える?

要支援1・2の方は、介護タクシーの介護保険部分(通院等乗降介助)の対象にはなりません。この訪問介護サービスは要介護1〜5の認定を受けた方に限定されています。

介護タクシーというと「車椅子のまま乗れる福祉車両」というイメージが先に立ちますが、制度上は2つの要素が組み合わさっています。ひとつは車両による移動そのもの、もうひとつは乗車前後の移乗や見守りといった介助です。このうち介護保険(訪問介護の通院等乗降介助)が評価しているのは後者の「介助」の部分であり、対象者は要介護認定を受けた方、それも要介護1〜5に限られています。要支援1・2の認定区分は、この訪問介護のサービス体系そのものの対象外という位置づけになっています。

これは、要支援の方の状態が軽いから優先度が低いという話ではなく、介護保険制度の設計上、要支援向けのサービスは「介護予防・日常生活支援総合事業」という別の枠組みで提供する建てつけになっているためです。要介護と要支援では、そもそも利用できるサービスのメニュー自体が分かれています。この線引きを知らずに「うちは要支援だから、介護タクシーの保険適用が使えるはず」と思い込んでいると、当日になって全額自費だと分かり、想定していた費用と食い違うことがあります。

要介護度による違いを整理すると、次のようになります。

認定区分通院等乗降介助(介護保険)総合事業の移動支援自費の介護タクシー・福祉タクシー
要介護1〜5対象(ケアプランへの位置づけが必要)対象外(介護給付の枠組みを利用)利用可(目的を問わない)
要支援1・2対象外自治体が実施していれば対象になり得る利用可(目的を問わない)
認定なし(自立)対象外自治体により基本チェックリスト該当者が対象になる場合がある利用可(目的を問わない)

こうして並べると分かるとおり、要支援の方にとって確実に使える選択肢は、実質的に自費の介護タクシー・福祉タクシーだけになりがちです。総合事業は自治体の実施状況次第で「使えるかもしれない」段階にとどまるため、まずは確実な選択肢である自費利用の仕組みを理解したうえで、総合事業が使えるかどうかを別途確認する、という順番で考えると混乱しにくくなります。

要介護1〜5と要支援1・2で、通院等乗降介助(介護保険)と自費の介護タクシー・福祉タクシーの利用可否が分かれる様子を示した判定フロー図

なぜ要支援だけ対象外になっているの?

要支援向けのサービスは、訪問介護とは別の「介護予防・日常生活支援総合事業」という枠組みに位置づけられているためです。通院等乗降介助はこの枠組みに含まれていません。

介護保険のサービスは、要介護認定を受けた方向けの「介護給付」と、要支援認定を受けた方向けの「介護予防給付」・市区町村ごとの「総合事業」に大きく分かれます。通院等乗降介助は訪問介護(介護給付)の一部として位置づけられており、要支援の方が利用する介護予防のサービスメニューには、これに相当するものが制度上組み込まれていません。

このため、要支援1・2の認定を受けている方が「病院への通院に付き添ってほしい」と考えても、介護保険の枠組みだけでは通院等乗降介助として保険給付を受けることができません。制度の建てつけとして、要支援の段階では移動そのものよりも、状態の維持・改善を目的とした予防的な支援に重点が置かれているためです。とはいえ、通院という生活に欠かせない場面での移動ニーズが消えるわけではないので、次の見出しで説明する総合事業や自費のサービスで補う形になります。

要支援の人が使える移動支援には何がある?

市区町村が任意で実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」の訪問型サービス(移動支援)が候補になりますが、実施状況は自治体ごとに大きく異なります。

総合事業は、要支援認定を受けた方や、基本チェックリストで生活機能の低下が確認された方などを対象に、市区町村が地域の実情に応じてサービス内容を組み立てる制度です。この中に「訪問型サービスD」と呼ばれる移動支援の類型があり、通院や買い物などの外出を支援する仕組みとして位置づけられていますが、これはすべての市区町村が実施しているわけではありません。地域によっては、移動支援そのものを総合事業のメニューに含めていない場合もあります。

そのため、要支援の認定を受けている方が移動支援を探すときの最初の一歩は、お住まいの市区町村の高齢福祉担当窓口、または地域包括支援センターへの確認です。「要支援の認定を受けているが、通院の移動で困っている」と具体的に相談すると、その自治体で使える総合事業のサービスや、シルバー人材センターの外出支援、社会福祉協議会の福祉有償運送といった地域資源を案内してもらえることがあります。介護タクシー事業所の側では把握しきれない、自治体固有の制度なので、まずケアマネジャーや地域包括支援センターに聞くのが確実です。

この段階でひとつ、オープンループとして触れておいた「認定区分が変わったときの備え」に関わる話があります。総合事業の移動支援は、対象となる地域・条件が限られる分、要介護に区分が変わった場合の切り替え先として、介護タクシーの存在を知っておくことには意味があります。この点は記事の後半でもう一度触れます。

ここでよくある失敗パターンが、「役所に一度聞いて『対象外』と言われたので諦めてしまう」という動き方です。総合事業の窓口は高齢福祉担当課、介護保険の窓口は介護保険課というように、自治体によって担当部署が分かれていることがあり、最初に問い合わせた窓口では移動支援のメニューを把握していなかった、というケースも起こり得ます。「通院等乗降介助は対象外です」という回答だけを聞いて引き下がるのではなく、「総合事業の中に移動支援や外出支援のメニューはありますか」と、名称を挙げて具体的に聞き直すことをおすすめします。地域包括支援センターは高齢者の相談を横断的に受ける窓口なので、担当部署が分からない場合はまずそこに相談すると、適切な部署へつないでもらえます。

自費の介護タクシー・福祉タクシーはどう使えばいい?

要介護度に関係なく、全額自費であれば介護タクシー・福祉タクシーを利用できます。料金は「運賃」「介助料」「機器レンタル料」の3つに分けて確認するのが基本です。

総合事業の対象外だったり、そもそも住んでいる自治体に移動支援のメニューがなかったりする場合、選択肢になるのが自費の介護タクシー・福祉タクシーです。介護保険を使わない自費利用であれば、要介護度や要支援区分にかかわらず、誰でも利用できます。目的地も通院に限らず、買い物や通所先への送迎など、幅広い外出に対応してもらえるのが自費利用の特徴です。

料金の考え方は、要介護の方が自費で利用する場合と変わりません。移動そのものにかかる「運賃」、乗り降りや車内での見守りにかかる「介助料」、車椅子やストレッチャーを借りる場合の「機器レンタル料」という3つの要素に分けて、それぞれの単価を確認します。この3つを合算した金額が、実際に支払う総額になります。要支援の段階では歩行がまだ安定している方も多いため、「介助料はかからず運賃だけで済む」というケースもあれば、状態によっては「乗降時の見守りだけお願いしたい」というように介助の範囲を限定して依頼できる事業所もあります。事前に本人の状態と必要な介助の範囲を伝えておくと、見積もりの精度が上がります。

問い合わせの手順としては、まず①電話やフォームで、利用日時・行き先・現在の認定区分(要支援であること)を伝え、②本人の歩行状態や車椅子の要否、必要な介助の範囲を具体的に説明し、③運賃・介助料・機器レンタル料それぞれの単価と、待機料・キャンセル料の有無を確認する、という流れになります。「要支援なので介護保険は使えないが、自費でお願いしたい」と最初に伝えておくと、事業所側も保険適用を前提にした案内をせずに済み、話がスムーズに進みます。

自費利用でよくある失敗は、「運賃だけを聞いて安いと判断し、実際には介助料や待機料が加算されて想定より高くなった」というケースです。特に要支援の方は、要介護の方に比べて「介助はいらないと思っていたが、実際には乗降時に手を貸してもらう必要があった」という想定違いが起きやすい面があります。見積もりを取る段階で、運賃・介助料・機器レンタル料の内訳を必ず個別に確認し、総額だけで比較しないようにすることが、当日の会計での行き違いを防ぐポイントです。

なお、当サイト「介護たくしーさーち」は、都道府県やサービス区分、対応可能な介助内容から事業所を検索・比較していただくサービスで、特定の利用者への個別の配車代行や運送の取次、予約の代行は行っていません。気になる事業所が見つかったら、検索結果の詳細ページから、運賃・介助料・機器レンタル料の内訳を含めて直接お問い合わせいただく流れになります。この基本の流れは、介護タクシーの料金はなぜ分かりにくい?でも詳しく整理しています。

要介護に区分が変わったら、何を確認すればいい?

要支援から要介護に区分が変わった時点で、初めて通院等乗降介助(介護保険)の対象になります。区分変更のタイミングで、ケアマネジャーへの相談とケアプランへの位置づけが必要です。

要支援の状態が続くとは限らず、更新認定のタイミングで要介護1以上に区分が変わることがあります。このとき、それまで自費や総合事業でまかなっていた通院の移動が、初めて介護保険の通院等乗降介助の対象になり得ます。ただし、区分が変わったからといって自動的に保険が適用されるわけではなく、ケアマネジャーへの相談とケアプランへの位置づけが欠かせない前提条件になります。

冒頭で触れた「認定区分が変わったときの切り替わり」は、ここで回収できます。要支援の間に自費の介護タクシーを何度か利用しておくと、事業所の対応や車両の様子、介助の丁寧さといった実際の使い勝手を、保険を使う前に確認できるという副次的な利点があります。要介護に切り替わったタイミングで慌てて事業所を探すよりも、要支援の段階から候補になりそうな事業所を知っておくと、いざというときの見積もり依頼や事業所への連絡がスムーズになります。

認定調査の結果は、本人の状態を最もよく把握しているケアマネジャーや主治医と共有されています。区分変更の申請を考えている場合は、通院の移動に困っている状況を、認定調査の際や日頃の相談の中で具体的に伝えておくと、実態に即した認定につながりやすくなります。

区分変更後の流れを具体的にすると、①要介護認定の結果が届いたら担当のケアマネジャーに連絡し、②通院等乗降介助を含めたケアプランの見直しを依頼し、③ケアプランに位置づけられた時点で、初めて事業所に「介護保険を使って通院に付き添ってほしい」と相談できるようになります。この順番を飛ばして、認定結果が出る前や、ケアプランへの位置づけが済む前に事業所へ「保険で使いたい」と伝えてしまうと、事業所側でも保険請求の可否を判断できず、結局は自費対応になってしまうことがあります。区分変更の申請中は、通院の予定が入っている場合、認定が確定するまでの間は従来どおり自費または総合事業で乗り切る前提で予定を立てておくと安心です。

この記事で持ち帰れること

  • 要支援1・2は介護タクシーの介護保険部分(通院等乗降介助)の対象外であり、対象になるのは要介護1〜5だと判断できるようになります
  • 要支援の方の移動支援は、市区町村の総合事業(訪問型サービスD等)が候補になるが自治体差が大きいため、まず地域包括支援センターに確認するという動き方が身につきます
  • 総合事業の対象外でも全額自費の介護タクシー・福祉タクシーは要介護度を問わず利用でき、運賃・介助料・機器レンタル料を分けて見積もりを取る基本の流れを持ち帰れます

まずは、お住まいの自治体に移動支援があるか確認してみましょう

要支援の認定を受けている方は、まず一度、お住まいの市区町村の高齢福祉担当窓口か地域包括支援センターに、「通院の移動で困っている」と伝えて、総合事業の移動支援があるかどうかを確認してみてください。それだけで、使える制度があるのか、自費での手配を前提に考えるべきなのかがはっきりします。

介護たくしーさーちでは、都道府県やサービス区分、対応可能な介助内容から事業所を検索・比較できます。料金の内訳を先に理解しておきたい方は介護タクシーの料金はなぜ分かりにくい?、退院のタイミングで手配を考えている方は退院時の介護タクシー手配はいつから?もあわせてご覧ください。気になる事業所が見つかったら、検索結果の詳細ページから直接お問い合わせください。