デイサービスに通っている日に、午後から病院の予約が入っている。ショートステイを終えて帰る日に、そのまま受診も済ませたい。こうした日の移動を考えると、「デイサービスの事業所から病院まで、介護タクシーで行けるのか」「そのとき介護保険は使えるのか」という疑問が出てきます。

先に、要点をまとめます。

  • 令和3年度の介護報酬改定で、自宅が出発点か到着点になっていれば、デイサービス(通所系サービス)やショートステイ(短期入所系サービス)の事業所と病院の間の移動にも、介護保険の通院等乗降介助を使えるようになりました
  • 条件は、要介護1〜5であること、ケアプランに位置づけられていること、自宅側の区間も含めて同じ訪問介護事業所が一連の移動を担当することです。デイサービスから病院へ行き、そのまま家に帰る、という形が典型です
  • 厚生労働省の改定資料と自治体のQ&Aで示されているのは、自宅を出発点か到着点に含む移動です。デイサービスと病院を行き来するだけの移動のように、その日の移動に自宅が入らない形が該当するかは、担当のケアマネジャーと保険者(市区町村)に確認します
  • 介護保険の対象は乗り降りなどの介助分だけです。運賃と車椅子などの機器レンタル料は、どの区間も自費です

介護たくしーさーちは、介護タクシー事業所の検索・比較と問い合わせの窓口を提供するサイトです。配車の手配や予約の代行、運送の取次は行っていません。この記事の確認項目を、ケアマネジャーと各事業所への相談に使ってください。

デイサービスから病院へ、介護タクシーで行ける?

行けます。自宅が出発点か到着点になる移動で、同じ訪問介護事業所が自宅側の区間も担当する場合は、デイサービスの事業所から病院への区間も介護保険の対象にできます。

介護保険で使う介護タクシーは、制度上は訪問介護の「通院等乗降介助」というサービスです。もともとは自宅と病院の間の移動を想定した仕組みで、デイサービスの事業所を出発点にする移動は対象に入っていませんでした。

厚生労働省は令和3年度の介護報酬改定で、この扱いを見直しました。改定資料では、目的地が複数ある場合でも、居宅(自宅)が始点または終点となるときは、病院から別の病院への移送や、通所系サービス・短期入所系サービスの事業所から病院への移送についても、同一の事業所が行うことを条件に算定できるとしています(厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」)。

ここでいう通所系サービスはデイサービス(通所介護)やデイケア(通所リハビリテーション)、短期入所系サービスはショートステイを指します。秋田県潟上市の通院等乗降介助Q&A(令和3年6月18日現在)でも、通所介護事業所や短期入所生活介護事業所から病院へ行く場合の算定例が図で示されています(潟上市「通院等乗降介助Q&A」)。

デイサービスの日の受診を別の日に動かしにくい家族にとっては、送迎の組み合わせ方の選択肢が増えたことになります。ただし、改定資料には条件が付いています。次の見出しで、資料で示されている移動の形を整理します。

介護保険の対象になり得る移動の形は?

資料で示されているのは、自宅を出発点か到着点に含む5つの形です。それ以外の形が該当するかは、ケアマネジャーと市区町村に確認します。

潟上市のQ&Aにある算定例を、家族の目線で並べ直すと次のようになります。

移動の形介護保険(通院等乗降介助)条件
デイサービス → 病院 → 自宅対象になり得る病院から自宅までの区間を同じ事業所が担当する場合に限り、デイサービスから病院の区間も対象
ショートステイ → 病院 → 自宅対象になり得る同上。ショートステイを終えて帰る日の受診が典型
自宅 → 病院 → デイサービス対象になり得る自宅から病院までの区間を同じ事業所が担当する場合に限り、病院からデイサービスの区間も対象
自宅 → 病院 → ショートステイ対象になり得る同上。受診を済ませてからショートステイに入る日
自宅 → 病院A → 病院B → 自宅対象になり得る自宅側の区間のどちらかを同じ事業所が担当する場合に限り、病院間の区間も対象

デイサービスやショートステイから病院を経て自宅へ帰る移動、自宅から病院を経てデイサービスやショートステイへ向かう移動が改定資料と自治体Q&Aで示された形で、自宅を含まない移動は担当のケアマネジャーと市区町村に確認することを示した図

資料の条件に照らして確かめる点は、「その日の移動のどこかに自宅が入っているか」と「自宅側の区間を、デイサービスから病院の区間と同じ事業所が担当するか」の2点です。潟上市のQ&Aの算定例では、病院から自宅までの区間を算定する場合に限り、デイサービスから病院の区間も算定できるとされています。たとえばデイサービスから病院までを介護タクシーで行き、帰りは家族の車で自宅に戻る場合は、この条件に当てはまりません。

デイサービスから病院へ行って再びデイサービスに戻る移動や、ショートステイの利用中に受診して施設に戻る移動は、改定資料と潟上市のQ&Aの算定例には含まれていません。こうした移動が必要になったときは、介護保険の扱いを家族が判断せず、担当のケアマネジャーを通じて保険者である市区町村に確認します。あわせて、デイサービスやショートステイの事業所にも、受診時の付き添いや送迎をどうするかを相談します。

使うための条件は?

要介護1〜5の認定、ケアプランへの位置づけ、同じ訪問介護事業所による一連の移動、の3つがそろっていることが前提です。

1つ目は認定区分です。通院等乗降介助は要介護1〜5の方が対象で、要支援1・2の方は対象外です。潟上市のQ&Aでも、要支援1・2の高齢者は通院等乗降介助を介護報酬として算定できないと説明されています。要支援の方が使える移動手段は要支援でも介護タクシーは使える?で整理しています。

2つ目はケアプランです。介護保険で介護タクシーを使うには、その移動がケアプランに位置づけられている必要があります。デイサービスや病院を経由する移動は、通常の自宅と病院の往復よりも関わる事業所が多いため、ケアマネジャーに早めに相談します。ケアプランが必要な理由は介護タクシーはケアマネジャーへの相談が必須?で詳しく説明しています。

3つ目は事業所です。介護保険の対象になるのは、訪問介護事業所の指定を受けた介護タクシー事業所が提供する場合です。自費専門の介護タクシーや福祉タクシーを使う場合は、移動の順番にかかわらず全額自費になります。さらに、デイサービスから病院の区間と、病院から自宅の区間を、同じ事業所が担当することが条件です。

デイサービスやショートステイ側では何が変わる?

介護タクシーで移動する区間は、デイサービスやショートステイの送迎を使わないことになります。送迎の有無で利用料の計算が変わるため、事前に伝えておきます。

改定資料では、この形で移動する場合、通所系サービスは利用者宅と事業所の間の送迎を行わない場合の減算を適用し、短期入所系サービスは送迎を行う場合の加算を算定しないとしています。家族の側から見ると、たとえば「デイサービスの帰りの送迎はなし」「ショートステイの退所日の送迎はなし」という扱いになります。

デイサービスやショートステイの事業所に伝えておくことは、次のとおりです。

  • 当日の送迎を使わない区間(帰りだけ、行きだけ)
  • 介護タクシーの迎えの時刻と、施設内のどこで引き継ぐか
  • 服薬や体調の記録、連絡帳など、病院へ持っていくものの受け渡し
  • 受診のあと施設に戻らない場合、帰宅後の連絡先

施設の玄関で介護タクシーに引き継ぐ時刻が決まると、デイサービスの昼食や入浴の予定、ショートステイの退所手続きの時刻も組み立てやすくなります。

費用はどう分かれる?

介護保険の対象は乗り降りなどの介助分だけです。運賃と車椅子・ストレッチャーなどの機器レンタル料は、デイサービスや病院を経由しても自費です。

改定資料にも、移送に係る運賃は介護保険の対象外で、車両への乗降介助などが介護保険の対象であると明記されています。経由地が増えても、この考え方は変わりません。

費用介護保険経由地が増えたときに確認すること
運賃対象外(自費)区間ごとに計算するのか、通しで計算するのか。病院での待ち時間に待機料金がかかるか
介助料条件を満たせば対象(自己負担は所得に応じて1〜3割)どの区間が介護保険の対象で、どの区間が自費になるか
機器レンタル料対象外(自費)施設から病院、病院から自宅まで同じ車椅子を使い続けられるか

介護保険の対象になる区間が増えても、運賃は走った距離や時間に応じてかかります。病院の受診が長引けば、待機料金が加わる事業所もあります。見積もりを頼むときは、3つの費用を分けて聞きます。費用の内訳の考え方は介護タクシーの料金はなぜ分かりにくい?にまとめています。

相談はどの順番で進めればいい?

ケアマネジャーに移動の形を伝えてケアプランに入れてもらい、介護保険の対象になる介護タクシー事業所を探し、最後にデイサービスやショートステイと時刻を合わせます。

  1. ケアマネジャーに相談する: 「デイサービスのあと病院へ行き、そのまま自宅に帰りたい」のように、出発地・経由地・到着地の順番で伝えます。介護保険の対象になるかどうかの判断と、ケアプランへの位置づけを相談します
  2. 事業所を探す: 訪問介護事業所の指定を受け、介護保険で通院等乗降介助を提供している介護タクシー事業所を探します。介護たくしーさーちでは、サービス区分「介護保険タクシー」と営業エリアで候補を絞り込めます
  3. 事業所に問い合わせる: 移動の順番、施設での引き継ぎ時刻、病院での待ち時間の見込み、車椅子の要否を伝え、3つの費用の見積もりを取ります。初めての電話で伝える項目は介護タクシーに初めて電話するとき、何を伝える?にまとめています
  4. 施設と時刻を合わせる: 決まった迎えの時刻を、デイサービスやショートステイの相談員に伝えます

病院の受診時間がずれ込むと、施設での引き継ぎ時刻や帰宅の時刻も動きます。病院の予約時刻と、受診にかかる時間の目安を先に確認しておくと、事業所との調整が進めやすくなります。

迷ったときに確認したいこと

この仕組みは、市区町村(保険者)の運用やケアプランの組み立てによって、扱いが変わる部分があります。とくに次の点は、自分たちで判断せずにケアマネジャーに確認します。

  • その日の移動の順番が、自宅を出発点か到着点に含んでいるか。含まない場合に介護保険の対象になるか
  • 自宅側の区間と施設・病院間の区間を、同じ事業所が担当できるか
  • デイサービスやショートステイの送迎を使わない区間と、利用料への影響
  • 病院の中での付き添い(院内介助)が必要な場合の扱い

デイサービスとの使い分けの基本はデイサービス送迎と介護タクシーの使い分け、介護保険が使える外出の範囲は介護タクシーは冠婚葬祭・買い物に使える?でも説明しています。

介護保険の対象になる介護タクシー事業所は、介護たくしーさーちの検索で、営業エリアとサービス区分から探せます。気になる事業所が見つかったら、詳細ページから事業所へ直接お問い合わせください。当サイトは配車の手配や予約の代行、運送の取次は行わず、料金や介護保険の扱いは各事業所とケアマネジャーが案内します。