車椅子を使う親と温泉に行きたい。帰省した実家の近くで、足腰が弱った祖母と紅葉を見に出かけたい。旅行の計画を立て始めると、「介護タクシーは旅行にも頼めるのか」「家の近くの事業所に頼めばいいのか、旅先で探すべきか」という疑問が出てきます。

旅行での使い方を判断する材料は、次の3つです。

  • 介護タクシーは旅行や観光にも頼めます。ただし旅行は介護保険(通院等乗降介助)の対象外なので、運賃・介助料・車椅子などの機器レンタル料はすべて自費です
  • タクシー事業者は、出発地と到着地のどちらも自社の営業区域の外にある運送を、道路運送法で原則として禁じられています。自宅から宿までの片道は自宅側の事業所に頼める場合がありますが、旅先の宿から観光地を回って宿に戻る移動は、旅先の営業区域で営業する事業所に頼むのが基本です
  • 旅先の事業所を探すときは、自宅ではなく宿や駅など旅先での乗車地の住所を起点に、営業エリアを確かめます

当サイト(介護たくしーさーち)でできるのは、旅先の地域を含めて事業所を探し、比べ、問い合わせ先を見つけるところまでです。旅行の配車を手配したり、予約を代わりに取ったり、運送を取り次いだりはしていません。行程の相談と予約は、この記事の確認項目を手元に置いて各事業所と直接進めてください。

旅行に介護タクシーは使える?

使えます。旅行・観光は介護保険の対象外のため、自費の介護タクシー・福祉タクシーとして依頼します。

介護保険で使う介護タクシーは、訪問介護の「通院等乗降介助」というサービスです。対象は日常生活に必要な外出に限られます。青森県八戸市の介護保険課は、対象とならない例として「趣味や嗜好のための利用(習い事、ドライブ、旅行等)」や冠婚葬祭を挙げています(八戸市「通院等のための乗車又は降車の介助サービスについて」)。同じページには、運転中の移送や運賃は介護報酬の対象にならないことも書かれています。

そのため、旅行での利用は全額自費になります。介護保険の対象になる外出の範囲は日常生活上必要な外出とは?で、冠婚葬祭や買い物との違いは介護タクシーは冠婚葬祭・買い物に使える?で整理しています。

自費であれば、行き先や目的を保険のルールで制限されることはありません。家族の同乗も、介護保険の通院等乗降介助で原則として認められない扱いとは別の話になります。乗れる人数は車両の座席数と車椅子の固定位置で決まるため、同乗する家族の人数は予約のときに伝えます。

自宅の近くの事業所と旅先の事業所、どちらに頼む?

その移動の出発地か到着地のどちらかが、事業所の営業区域に入っているかで考えます。旅先の中だけを移動するなら、旅先で営業している事業所に頼むのが基本です。

道路運送法第4条の許可を受けて営業する介護タクシーは、一般のタクシーと同じ一般旅客自動車運送事業者にあたります。道路運送法第20条は、一般旅客自動車運送事業者に対し、出発地(発地)と到着地(着地)のどちらもが営業区域の外にある運送を、災害など一部の例外を除いて禁じています(e-Gov法令検索「道路運送法」)。許可の区分による違いは介護タクシーに必要な運送事業の許可区分で整理しています。

旅行の移動を、この考え方で分けると次のようになります。

移動の形自宅の地域の事業所旅先の事業所
自宅 → 旅先の宿(行き)出発地が自宅なので、依頼できる場合がある到着地の宿が営業区域に入っていれば、依頼できる場合がある
旅先の宿 → 自宅(帰り)到着地が自宅なので、依頼できる場合がある出発地の宿が営業区域に入っていれば、依頼できる場合がある
旅先の宿 → 観光地 → 宿出発地も到着地も区域外になりやすく、原則として依頼できない主な依頼先
自宅 → 日帰りの観光地 → 自宅出発地と到着地が自宅なので、依頼できる場合がある対象になりにくい

自宅から宿までの行きと宿から自宅までの帰りは自宅の地域の事業所に頼める場合があり、旅先の宿から観光地を回る移動は旅先の事業所に頼むことを示した図

表の「依頼できる場合がある」は、法律上の制限に当たらない形という意味です。実際に引き受けるかどうかは、距離・所要時間・車両の空き・乗務員の体制を見て各事業所が判断します。営業区域の範囲も事業所ごとに違うため、「自宅は○○市、宿は△△温泉の□□旅館です。この行程は対応できますか」と、出発地と到着地をセットで伝えて確認します。

宿泊を伴う旅行では、行きと帰りを自宅側の事業所、旅先での観光を旅先の事業所、と分けて頼む形もあります。新幹線や飛行機を使うなら、自宅から駅・空港までを自宅側の事業所、到着した駅・空港から宿までを旅先の事業所に頼む組み合わせになります。駅・空港での待ち合わせや荷物の伝え方は駅・空港への移動で介護タクシーを使う確認ポイントにまとめています。

旅先の事業所はどう探す?

宿や到着する駅など、旅先で乗る場所の住所を起点に探します。自宅の住所で探すと、旅先で営業していない事業所が候補に残ります。

介護たくしーさーちの検索は、乗車地の住所が事業所の営業エリアに入っているかを突き合わせます。旅先の事業所を探すときは、都道府県と市区町村を旅先の宿の所在地に合わせます。営業エリアの見方は利用者住所から介護タクシーを探す使い方で説明しています。

旅先で探すときに確かめておきたい点は、次のとおりです。

  • 乗車地と行き先: 宿の住所、回りたい観光地、最後に戻る場所(宿・駅・空港)
  • 車両: 車椅子のまま乗れるか、リクライニング車椅子やストレッチャーに対応しているか
  • 介助の範囲: 乗り降りや観光地での車椅子の押し歩きをどこまで頼めるか。宿の中での入浴など、移動以外の介助は別の手配が必要になることがある
  • 時間帯: 観光地の滞在中に待機してもらうのか、別の時刻に迎えに来てもらうのか

地方の観光地では、事業所の数や車両の台数が限られていることがあります。候補が少ない地域での探し方は地方で介護タクシーを探すポイントが参考になります。車椅子対応のUDタクシーなど一般のタクシーで足りる場面もあるため、介助の要否で選び分ける考え方は介護タクシーと一般タクシーの違いは?で確認できます。

費用はどう見積もる?

運賃・介助料・機器レンタル料を分けて見積もりを取り、待機料金や高速道路料金、事業所が営業所へ戻る分の扱いも確かめます。

旅行での利用は、3つの費用がすべて自費です。旅行は移動時間も滞在時間も長くなりやすいため、メーター制より、時間制や貸切の料金方式を提示する事業所もあります。

費用介護保険旅行で確認すること
運賃対象外(自費)メーター制か時間制か。待機料金、高速道路料金、遠方まで片道で送った場合に営業所へ戻る分の扱い
介助料対象外(自費)乗り降りの介助だけか、観光地での車椅子の介助も含むか
機器レンタル料対象外(自費)旅行の日数分を借りられるか。車両に積んだまま宿に置いていけるか

自宅側の事業所に遠方の宿まで送ってもらう場合は、走行距離が長くなるうえ、帰りの空車の分をどう扱うかで総額が変わります。長距離の料金の確かめ方は長距離で介護タクシーを使うときの料金確認、費用の内訳の考え方は介護タクシーの料金はなぜ分かりにくい?で整理しています。行き帰りを自宅側に頼む場合と、駅・空港まで送ってもらい旅先の事業所を使う場合で、見積もりを並べて比べると選びやすくなります。

予約はいつ、何を伝える?

日程と行程が決まった段階で相談を始め、宿の住所・列車や便の到着時刻・車椅子の種類・同乗する人数を伝えます。

連休や観光シーズンに旅行する場合は、早めに空き状況を問い合わせます。旅先の事業所とは初めてのやり取りになるため、次の内容をまとめてから問い合わせると、対応できるかどうかの返事を早くもらえます。

  1. 日付と時刻: 宿に入る日と出る日。駅・空港で迎えてもらう場合は列車や便の到着時刻
  2. 行程: 宿の住所、立ち寄る観光地、それぞれの滞在時間の見込み
  3. 本人の状態: 車椅子の種類(普通型・リクライニング型)、移乗にどのくらい介助が要るか、長時間座っていられるか
  4. 同乗者と荷物: 同乗する家族の人数、スーツケースの数
  5. 費用: 運賃・介助料・機器レンタル料を分けた見積もりと、キャンセルの連絡期限

予約のタイミングとキャンセル料の確かめ方は介護タクシーの予約は何日前まで?、行程の書き出し方や当日の持ち物は冠婚葬祭・観光で介護タクシーを使うで説明しています。

迷ったときに確認したいこと

旅行の移動は、行程の組み方によって頼める事業所が変わります。予約の前に、次の点を事業所に確かめます。

  • その行程の出発地と到着地が、事業所の営業区域に入っているか
  • 行きと帰りを頼む事業所と、旅先での移動を頼む事業所を分ける必要があるか
  • 運賃・介助料・機器レンタル料と、待機料金・高速道路料金・戻りの費用の扱い
  • 観光地や宿で、どこまで介助してもらえるか

旅先の候補は、介護たくしーさーちの検索で宿の所在地と車両設備を指定すると絞り込めます。問い合わせは各事業所の詳細ページから直接行い、対応できる行程と料金の説明は事業所から受けてください。当サイトが旅行の予約を代わりに取ることはありません。