通院の日に、近所の方や昔からの知人が「車を出しますよ」と声をかけてくれることがあります。ありがたい申し出ですが、「お礼はどう渡せばいいのか」「ガソリン代を払ったら白タクになってしまうのでは」と迷うこともあります。好意で引き受けてくれた相手に、迷惑はかけたくありません。
先に、要点をまとめます。
- 無償で送ってもらう場合、気持ち程度のお礼や、ガソリン代・有料道路代・駐車場代などの実費を払っても、国土交通省のガイドラインでは道路運送法の許可・登録は不要とされています
- 送る側が運賃表を決めて受け取る形や、お礼を強く求めて受け取る形は「謝礼」と認められず、許可・登録が必要な有償の運送として扱われます
- 車椅子のまま乗る、乗り降りに介助が要る、定期的な通院で毎回は頼みにくい、といった場合は介護タクシーを考えます。費用は運賃・介助料・機器レンタル料に分けて確かめます
当サイト(介護たくしーさーち)でできるのは、介護タクシーの事業所を探して比べ、問い合わせ先を見つけるところまでです。配車の手配や予約の代行、運送の取次はしていません。近所の方に頼む場合も、介護タクシーを頼む場合も、やり取りは当事者どうしで行っていただく形になります。
近所の人に送ってもらってお礼を渡すと、法律違反になる?
気持ち程度のお礼なら違反になりません。国土交通省のガイドラインは、無償の送迎へのお礼は運送の対価ではないと整理しています。
自家用車(白ナンバー)で人を乗せてお金を受け取ることは、道路運送法第78条で原則として禁止されています。例外は、災害で緊急を要するときと、国土交通大臣の登録や許可を受けた場合です(e-Gov法令検索「道路運送法」)。いわゆる「白タク」が違法とされるのはこのためです。
一方で、お金を受け取らずに人を乗せる無償の運送は、道路運送法の規制の対象外です。国土交通省の「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドライン」(令和6年3月1日国自旅第359号、令和8年6月5日一部改正)は、無償の運送は本来自由に行えるものだとしたうえで、次の2つは無償の運送に伴って支払ってよいと整理しています(国土交通省「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドラインについて」)。
- 謝礼: 交通手段を持たない高齢者を買い物に同乗させるといった、ボランティア・共助へのお礼の気持ち程度のもの
- 実費: 送迎に実際にかかったガソリン代などの費用(次の節で説明します)
近所の方が通院のついでに乗せてくれて、帰りにお礼の品や気持ちばかりのお金を渡す。この形は、ガイドラインの「謝礼」の考え方にあてはまります。渡すのは、送ってもらったあとに、お礼として渡す形が基本です。
ガソリン代や駐車場代は、どこまで払っていい?
燃料代、有料道路の料金、駐車場料金、ボランティア向けの保険料、送迎のために借りたレンタカー代が「実費」で、受け取っても許可・登録は不要です。
ガイドラインが「実費」として挙げているのは、次の費用です。迎えに来るまでの走行と、送ったあとに戻るまでの走行(前後の回送)も含めてよいとされています。
| 実費にあたるもの | 補足 |
|---|---|
| ガソリンなどの燃料代 | 走行距離(km)÷燃費(km/ℓ)×1ℓあたりのガソリン価格、で計算できる |
| 道路通行料 | 有料道路を実際に使った分 |
| 駐車場料金 | 病院の駐車場代など、実際にかかった分 |
| 保険料 | ボランティア団体やNPOなどが提供する、1回・1日あたりの無償の運送を対象にした保険の料金。車にもともと掛けている自賠責保険・任意保険は対象外 |
| 車両借料 | 送迎のために借りたレンタカー代 |
ガソリン代の計算例を挙げます。往復20kmを、燃費が1ℓあたり15kmの車で走る場合、使うガソリンは約1.3ℓです。これに、その時期の1ℓあたりのガソリン価格を掛けた額が目安になります。送迎が何度も続くときは、一定の期間「1kmあたり○円」と決めて概算する方法も、簡易な方法として認められています。
上の表にない費用、たとえば車の購入費や車検代、運転してくれた人の手間賃などを、個人の送迎で受け取る形は「実費」の範囲を超えます。そうなると運送の対価と見られるおそれがあるので、お金で渡すなら、表の範囲で計算した額にとどめておくと迷いません。
お礼が「運賃」とみなされるのはどんなとき?
送る側が金額を決めて受け取る形や、お礼を強く求めて受け取る形は「謝礼」にあたりません。許可・登録のない有償の運送として扱われます。
ガイドラインは、謝礼を隠れみのにして営利の運送をすることは想定していないとして、次の場合は謝礼と認めないとしています。
- 送る側が運賃表を定め、利用者がそれに従って支払う場合
- 口頭や身ぶりで強くお礼を求めるなど、お礼の名を借りて実質的に運賃を求める場合
- ウェブサイトなどで無償の送迎を仲介するサービスで、お礼の金額を入力しないと使えない、お礼の有無や金額で利用者を選ぶ、といった扱いをする場合
頼む側として気をつけたいのは、最初から「片道いくらで」と金額を決めて頼む形です。好意で引き受けてくれた相手を、許可の要る運送をしているのと同じ立場に置いてしまいます。お礼は送ってもらったあとに気持ちとして渡し、ガソリン代を払うなら距離と燃費で計算した実費にする。この2つを守ると、お互いに後ろめたさを感じずにすみます。
なお、ガイドラインは、個々の送迎が許可・登録の要る有償の運送にあたるかどうかを、最終的には事案ごとに総合的に判断するとしています。判断に迷う形のときは、お住まいの地域を管轄する運輸支局に問い合わせることができます。
社会福祉協議会や自治会の送迎なら、頼みやすい?
地縁団体が会費で行う送迎は、許可・登録なしで行えると整理されています。地域にこうした助け合いの仕組みがあれば、個人に頼むより気兼ねが少ない場合があります。
ガイドラインは、市町村社会福祉協議会、自治会・町内会、マンション管理組合、老人クラブなどの地縁団体の活動として、会員が負担する会費で送迎サービスを行ってよいとしています。会費で車をそろえることや、運転する人に会費から報酬を払うこともできるとされています。
これとは別に、NPO法人などが道路運送法第79条の登録を受けて行う福祉有償運送もあります。こちらは登録にもとづいて対価を受け取る仕組みで、利用できる人や料金は運営団体ごとに決まっています。介護タクシーとの違いは福祉有償運送と介護タクシーは何が違う?で比べています。
地域にどのような送迎の助け合いがあるかは、市区町村の窓口や社会福祉協議会、地域包括支援センターで尋ねることができます。
近所の人の送迎から、介護タクシーに切り替える目安は?
車椅子のまま乗る必要が出てきたとき、乗り降りや移動に介助が要るようになったとき、通院が定期的になって毎回は頼みにくくなったときが目安です。
近所の方の車での送迎は、本人が自分で乗り降りできるうちは頼みやすい方法です。次のような状態になったら、介護タクシーを検討する時期です。
- 車椅子のまま乗る、またはストレッチャーで横になったまま移動する必要がある
- 玄関から車まで、車から病院の受付までの移動に手を貸す人が要る
- 透析やリハビリのように通院が定期的で、毎回同じ人に頼むのが心苦しい
- 移動中に体調が変わったときの対応や、万一の事故のときのことが気がかり
近所の方の車で事故が起きたときに使うのは、その車の自賠責保険と、持ち主が契約している任意保険です。どこまで補償されるかは契約の内容によるので、頼む側からは確かめにくい部分です。介護タクシーは、道路運送法の許可を受けた事業者が運行します。許可の区分については介護タクシーに必要な運送事業の許可区分で説明しています。
いつ検討を始めればよいか迷うときは、介護タクシーはいつ検討を始める?の3つの目安も参考になります。
介護タクシーに切り替えると、費用はどう分かれる?
介護タクシーの費用は、運賃・介助料・機器レンタル料の3つに分かれます。介護保険が使える場合も、対象は乗り降りなどの介助の部分だけで、運賃と機器レンタル料は自費です。
- 運賃: 許可を受けた事業者が定める運賃です。距離制や時間制などがあり、迎車料金や待機料金がかかる場合もあります
- 介助料: 乗り降りや移動の介助に対する料金です。ケアプランに位置づけられた通院等乗降介助として行う場合は、この部分が介護保険の対象になります
- 機器レンタル料: 車椅子やストレッチャーなどを借りる場合の料金です
近所の方に払う実費とは、性格がまったく違います。介護タクシーは許可を受けた事業として運賃を受け取り、介助も仕事として引き受けます。予約の前に3つの区分ごとに金額を確かめておくと、当日の精算で戸惑いません。内訳の見方は介護タクシーの料金はなぜ分かりにくい?に、割引や助成で負担を抑える方法は介護タクシーの料金はなぜ高い?にまとめています。
介護たくしーさーちは、送迎の手配をしてくれる?
しません。当サイトは事業所を探して比べ、問い合わせ先を見つけるところまでで、配車の手配、予約の代行、運送の取次は行っていません。
運送の契約は、利用する人と事業所の間で結ばれます。予約や料金の確認、当日の介助の内容は、事業所に直接問い合わせて決めてください。事業所の検索では、各事業所の運送事業の許可区分を表示しています。サイトが取次をしない理由は掲載・検索・送客と配車代行の線引きで説明しています。
まとめ
- 近所の方や知人に無償で送ってもらう場合、気持ち程度のお礼と、燃料代・有料道路代・駐車場代などの実費は払ってよく、許可・登録は不要です
- 送る側が運賃表を決めて受け取る形や、お礼を強く求めて受け取る形は、許可・登録の要る有償の運送として扱われます。頼む側も、最初から金額を決めて頼む形は避けます
- 地域の社会福祉協議会や自治会が会費で行う送迎、NPO法人などの福祉有償運送という選択肢もあります
- 車椅子のままの乗車や介助が必要になったら、介護タクシーを検討します。費用は運賃・介助料・機器レンタル料に分けて確かめ、介護保険の対象は介助分だけです
次に送ってもらう前に、行き先までの往復の距離と車の燃費を相手に聞いておくと、ガソリン代をいくら渡せばよいかがその場で計算できます。

