初めて介護タクシーを頼むとき、「当日来る人は介護の資格を持っているのだろうか」と気になることがあります。父を車椅子から座席へ移してもらう、認知症のある母に声をかけながら病院の受付まで付き添ってもらう。体に触れる介助を任せるなら、相手がどんな訓練を受けた人なのかを知っておきたくなります。

先に、要点をまとめます。

  • 介護タクシーでお客を乗せて運転するには、普通第二種運転免許が必要です(道路交通法第86条)
  • 介護保険の「通院等乗降介助」は訪問介護のサービスなので、乗り降りの介助を担うのは介護福祉士や、介護職員初任者研修などを修了した訪問介護員です
  • 自費で頼む介護タクシーでは、乗務員の介護資格は事業所ごとに違います。予約の前に「当日の担当者の資格」と「運転する人と介助する人が同じか」を確かめると、当日の行き違いを防げます

当サイト(介護たくしーさーち)でできるのは、事業所を探して比べ、問い合わせ先を見つけるところまでです。配車の手配や予約の代行、運送の取次はしていません。乗務員の資格や当日の体制は、この記事の質問例を使って各事業所に直接確かめてください。

介護タクシーを運転するのに必要な免許は?

普通第二種運転免許です。介護タクシーは運賃を受け取って人を運ぶ旅客自動車運送事業なので、一般のタクシーと同じ免許区分が必要になります。

道路交通法第86条は、旅客自動車運送事業に係る旅客を運送する目的で旅客自動車を運転しようとする者に、自動車の種類に応じた第二種免許を求めています(e-Gov法令検索「道路交通法」)。介護タクシーで使うワゴン型の福祉車両やセダン型の車両は、多くが普通自動車にあたるため、乗務員は普通第二種免許を持っています。

運転免許については、利用する側が一人ひとりの免許を確かめる必要はほとんどありません。運送事業の許可を受けた事業所が、第二種免許を持つ人を乗務させているからです。

例外は、NPO法人などが運営する福祉有償運送です。こちらは第一種免許に国土交通大臣認定の講習を組み合わせた運転者も認められています。違いは福祉有償運送と介護タクシーは何が違う?で比べています。

乗り降りを手伝う人には、どんな資格が求められる?

介護保険を使うか、自費で頼むかで変わります。介護保険の通院等乗降介助なら訪問介護員の資格が前提で、自費の場合は事業所の体制しだいです。

利用の形ごとに整理すると、次のようになります。

利用の形介助をする人に求められること根拠
介護保険の通院等乗降介助介護福祉士、または介護職員初任者研修などを修了した訪問介護員介護保険法第8条第2項、同法施行令第3条
自費の介護タクシー(福祉車両)ケア輸送サービス従事者研修、福祉タクシー乗務員研修、介護福祉士、訪問介護員、サービス介助士のいずれかを満たすよう努める国土交通省通達(福祉輸送事業限定の許可等の取扱い)
自費の介護タクシー(セダン型の一般車両)ケア輸送サービス従事者研修、介護福祉士、訪問介護員、居宅介護従業者のいずれかが必須同上
福祉有償運送(参考)運転者は第二種免許、または第一種免許+大臣認定講習の修了道路運送法の自家用有償旅客運送の制度

介護保険の通院等乗降介助では訪問介護員の資格が前提で、自費の福祉車両では研修や資格を満たすよう努める扱い、自費のセダン型車両では研修や資格が必須になることを示した図

介護保険を使う場合

介護保険法第8条第2項は、訪問介護を「介護福祉士その他政令で定める者」が行うサービスと定めています。政令(介護保険法施行令第3条)が定めるのは、都道府県知事などが行う介護員養成研修の修了者で、その研修課程は介護保険法施行規則第22条の23で介護職員初任者研修課程などとされています(e-Gov法令検索「介護保険法施行令」)。

通院等乗降介助は、この訪問介護の区分の一つです。そのため介護保険で介護タクシーを使う場合、乗り降りの介助を担うのは、訪問介護員として働ける資格を持つ人になります。事業所は運送事業の許可に加えて、訪問介護事業所としての指定も受けている必要があります。

この場合でも、介護保険の対象になるのは介助の部分だけです。運賃と、車椅子・ストレッチャーなどの機器レンタル料は自費になります。保険を使う手順は介護タクシーはケアマネジャーへの相談が必須?にまとめています。

自費で頼む場合

介護保険を使わない介護タクシーの多くは、一般乗用旅客自動車運送事業の「福祉輸送事業限定」の許可で営業しています。国土交通省の通達は、この許可で使う車両に乗務する人の要件を次のように分けています(国土交通省「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可等の取扱いについて」平成18年9月25日国自旅第169号、平成21年11月25日一部改正)。

  • スロープ・リフト・回転シートなどを備えた福祉車両に乗務する人は、ケア輸送サービス従事者研修の修了、福祉タクシー乗務員研修の修了、介護福祉士、訪問介護員、サービス介助士のいずれかを満たすよう努めなければならない
  • セダン型などの一般車両に乗務する人は、ケア輸送サービス従事者研修の修了、介護福祉士、訪問介護員、居宅介護従業者のいずれかを満たさなければならない

福祉車両の要件は「努める」という書き方なので、自費の介護タクシーでは、乗務員がどの資格や研修を持っているかが事業所によって違います。資格を持つ人が運転と介助を兼ねる事業所もあれば、運転者とは別に介護福祉士などが同乗する体制をとる事業所もあります。近畿運輸局の取扱いでも、運転者とは別に介護福祉士等が乗務する場合を含めるとしています(近畿運輸局「福祉輸送事業の許可等の申請に関する審査基準」の細部取扱い)。

資格の名前は、それぞれ何を表している?

介護の資格は、国家資格の介護福祉士と、都道府県の指定する研修の修了資格に分かれます。運輸側の研修は、タクシーや福祉輸送の業界団体が乗務員向けに行うものです。

事業所の案内や電話で出てきやすい名前を並べます。

  • 介護福祉士: 介護の国家資格です。訪問介護員として働くことができます
  • 介護職員初任者研修: 訪問介護員として働くための入門の研修課程です。2013年4月に、それまでの訪問介護員(ホームヘルパー)2級課程などがこの課程に一本化されました。旧ホームヘルパー2級を修了した人は、初任者研修を修了したものとみなされます(和歌山県「訪問介護員(ホームヘルパー)として働くためには」)
  • 実務者研修: 初任者研修より学ぶ範囲が広い研修課程です
  • ケア輸送サービス従事者研修/福祉タクシー乗務員研修: タクシーや福祉輸送の業界団体が乗務員向けに行う研修で、上の通達で要件として挙げられています
  • サービス介助士: 民間の資格で、上の通達では福祉車両の乗務員が満たすよう努める要件の一つです

名前が「ヘルパーの資格を持っています」のように省略されて伝わることもあります。どの資格なのか分からないときは、正式な名前を聞き返して構いません。

資格があれば、どんな介助でも頼める?

頼めません。資格は介助の訓練を受けた目安で、頼める範囲はサービスの区分と事業所の体制で決まります。

介護保険の通院等乗降介助で頼めるのは、乗車・降車の介助、乗車前・降車後の屋内外での移動の介助、通院先での受診の手続きなどです(八戸市「通院等のための乗車又は降車の介助サービスについて」)。病院の中での付き添いが介護保険の対象になる場面は限られ、扱いは市区町村の判断によります。乗り降りの介助で何を頼めるかは介護タクシーの乗降介助で頼めることで具体的に整理しています。

痰の吸引などの医療的ケアは、介護福祉士の資格があるだけでは行えず、行うには別の研修と登録が必要です。移動中に医療的な対応が必要になりそうな方は、介護タクシーではなく民間救急が合う場合もあります。

資格の有無と、ご本人の状態に慣れているかどうかも別の話です。認知症のある方なら声かけや見守りの経験、体の大きな方なら二人での介助の体制のほうが、当日の安心に直結することがあります。認知症のある方の通院で確かめておきたいことは介護タクシーは認知症のある家族の通院に対応してくれる?にまとめています。

予約の前に、事業所にはどう確かめる?

「当日の担当者の資格」「運転と介助を同じ人がするか」「料金がどう変わるか」の3つを、本人の状態とセットで聞きます。

電話やメールでは、次のように聞くと答えが具体的になります。

  • 「車椅子から座席への移乗が必要です。当日担当される方は、介護福祉士や初任者研修などの資格をお持ちですか」
  • 「運転する方が介助もしてくださいますか。それとも介助の方が別に同乗されますか」
  • 「介助の方が別に乗る場合や、二人で介助する場合は、運賃・介助料・機器レンタル料のどこに料金が加わりますか」
  • (介護保険を使う場合)「訪問介護事業所の指定を受けていて、通院等乗降介助として対応していただけますか」

料金は、運賃・介助料・機器レンタル料に分けて確かめます。介助をする人が増える場合や、資格を持つ人を指名したい場合は、介助料などが変わることがあります。分け方は介護タクシーの料金はなぜ分かりにくい?で説明しています。

介護たくしーさーちでは、検索の「こだわり条件」にある「初任者研修等の介助資格者が対応」で、介助資格者が対応すると登録している事業所に絞り込めます。事業所が情報を登録している場合は、詳細ページの「スタッフ紹介」に乗務員の資格が表示されます。絞り込みの操作は車椅子・ストレッチャー・院内介助で介護タクシーを絞り込む使い方で説明しています。登録内容は事業所の申告にもとづくため、予約の際には上の質問で当日の体制を確かめてください。

事業所の比べ方全体は介護タクシーの事業所はどう比べる?家族が見るべき6つの軸と確認の順番で、資格以外の軸と合わせて整理しています。

まとめ

  • 運転には普通第二種免許が必要です。運送事業の許可を受けた事業所の乗務員なら満たしています(福祉有償運送は別の要件)
  • 介護保険の通院等乗降介助では、介護福祉士や初任者研修などを修了した訪問介護員が介助を担います
  • 自費の介護タクシーでは、乗務員の資格は事業所ごとに違います。福祉車両では研修や資格を満たすよう努める扱い、セダン型の一般車両では必須です
  • 予約の前に「当日の担当者の資格」「運転と介助を同じ人がするか」「料金がどう変わるか」を確かめます

本人の介助で特に手が必要な場面(移乗、階段、院内の移動など)を一つ書き出してから電話すると、事業所も担当者の資格と体制を答えやすくなります。